電子添文には、血中濃度測定を推奨する記載はありません。(引用1、2)
従って、フィコンパ(ペランパネル)のTDM*は必須ではありません。
ペランパネルの血中濃度モニタリング(TDM*)は必須ではありませんが、抗てんかん薬は、服薬コンプライアンスの確認や副作用発現時、相互作用がある薬剤併用時などの場合に血中濃度測定が有用と言われています。(引用3)
*TDM:Therapeutic Drug Monitoring
てんかん診療ガイドライン2018には、ペランパネルの血中濃度測定の有用性に関して以下の記載があります。(引用4)
第12章薬物濃度モニター
CQ12-2 血中濃度測定が有用な薬剤はどれか
要約
抗てんかん薬の参考域濃度は、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、プリミドン、バルプロ酸、エトスクシミドでは一致した見解が示され、血中濃度測定は有用である。しかし、参考域の血中濃度があまり有用でない薬剤や注意すべき変動を示す薬剤がある。
(CQ12‐2 表2より)血中濃度測定の有用性
非常に有用:フェニトイン、ラモトリギン
有用 :カルバマゼピン,フェノバルビタール,バルプロ酸,ルフィナミド,ペランパネル
ある程度有用:プリミドン,エトスクシミド,ゾニサミド,トピラマート
限定的または未確定:クロナゼパム、クロバザム,ジアゼパム,ニトラゼパム,アセタゾラミド,ガバペンチン,レベチラセタム,臭化カリウム,スチリペントール,ビガバトリン,ラコサミド
(引用5)
※ペランパネルの血中濃度測定は、複数の臨床検査センターで可能です。直接お問い合わせ下さい。
【関連情報】
てんかん診療ガイドライン2018に引用されている上記の『The treatment of Epilepsy,4th ed.2015.p124‐138』には、ペランパネルの血中濃度に関して以下の記載があります。(引用5)
・TDMの応用における実践的な側面
集団薬物動態-薬力学データに基づく分析では、血清ペランパネル濃度と治療反応の間に関係性注)が存在することが示唆された。(引用6)
0.05~0.4μg/ml(0.14~1.14μmol/L)程度の参考域が予備的に提案されている。(引用7)
注)非線形混合効果モデルで分析し、血清ペランパネル濃度と対数補正をした発作頻度減少(治療反応)の間に直線的な関係が存在することが示唆されました。また、多幸感、構音障害、体重増加、歩行障害、易刺激性、疲労、傾眠、およびめまいについて、ロジスティック回帰分析による副作用予測確率は、ペランパネルの血漿中濃度が高いほど有意に増加しました(p<0.001 vs. 低濃度、各々)。(引用6)
てんかん診療ガイドライン2018には、ペランパネルの治療域血中濃度に関して以下の記載があります。(引用3)
第12章薬物濃度モニター
CQ12-2 血中濃度測定が有用な薬剤はどれか
(CQ12‐2表1より) 参考域の血中濃度:0.05~0.4μg/ml
12歳以上保険適用。
てんかん診療ガイドライン2018には、抗てんかん薬の血中濃度測定の有用性に関して以下の記載があります。(引用3)
第12章薬物濃度モニター
CQ12‐1 抗てんかん薬の血中濃度測定はどのようなときに行うか
要約
抗てんかん薬の血中濃度測定が有用なのは、(1)望ましい発作抑制状態が得られたときの個々の治療域の血中濃度の確立、(2)臨床的な副作用の診断、(3)コントロール不良または発作再発(breakthrough seizure)時の服薬状況(アドヒアランス)の評価、(4)薬物動態が変化する状態(小児、高齢者、他疾患の併存、剤型の変化など)での投与量の調節、(5)薬物動態の変化が予測される場合(妊娠、相互作用がある薬物の追加または除去)、(6)用量依存性の薬物動態を示す薬剤(特にフェニトイン)の用量調節、である。
※日本TDM学会編:『抗てんかん薬の薬物血中濃度モニタリングに関するガイドライン2018』には、ペランパネルについての記載はありません。
【引用】
1)フィコンパ錠2mg・4mg・細粒1% 電子添文 2024年2月改訂(第5版)
2)フィコンパ点滴静注用2mg電子添文 2024年4月改訂(第2版)
3)日本神経学会 てんかん診療ガイドライン2018 p121-122 医学書院 [NEURO-1242]
4)日本神経学会 てんかん診療ガイドライン2018 p123-125[NEURO-1242]
5)The treatment of Epilepsy,4th ed.Chichester: Wiley Blackwell,2015.p124-138[NEURO-1187]
6)Gidal B.E. et al:Epilepsia.54(8),p1490-1497(2013)[FYC-0155]
7)Gidal B.E. et al:Epilepsy Behav. (2014) 35(1).p6-12(2014)[FYC-0076]
【更新年月】
2025年1月
KW:採血、トラフ値、定常状態、測る、血中濃度測定、TDM、検査