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  • No : 1007
  • 公開日時 : 2018/11/01 00:00
  • 更新日時 : 2021/01/22 17:00
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【ワーファリン】 III‐11.1.コントロールに影響する要因(各論)(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)

【ワーファリン】 
 
III‐11.1.コントロールに影響する要因(各論)(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)
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回答

1. ワルファリンに対する患者の反応性

患者のワルファリンに対する適応力に余裕がない場合として、少量の用量変更でも血液凝固能が大きく変動する場合がある。近年明らかになってきたCYP2C9の遺伝子多型などを把握できる患者1,2)の場合は、その背景情報は重要と考えられる。クリアランスが1/3~1/10などとなるため、少量でも反応することが予測される。


2.患者の病態の変化

ビタミンK吸収に影響するような胆道系疾患3,4,5)など、食欲不振6,7,8)、特に絶食状態などの食事摂取の変動は通常適度に摂取されているビタミンKが枯渇した場合、その影響は見過ごせない。

甲状腺機能異常9,10,11)で血液凝固能の変動が知られている。甲状腺ホルモンはプロトロンビン、第Ⅶ因子、第Ⅹ因子の代謝回転を促進するため、甲状腺機能の変動は抗凝固薬の効果に影響すると考えられる。Hanstenら(1980)11)は、経口抗凝固薬、甲状腺機能異常、甲状腺機能に影響を与える薬物との相互作用やその機序について甲状腺機能の状態を分類して解説している。

尿路感染症、脱水、低アルブミン血症などの要因6,7)、精神病合併12)、開心術後13)、小児のコントロール不良14)などの報告もある。


3.ワルファリンの投与量の頻繁な変更

ワルファリンの血中半減期はおよそ40時間であり、定常状態に達するまで時間を要する中で、慌てて用量変更を行うと、血液凝固能検査値と投与量との関係を把握できなくなる。事例として、抜歯後のコントロール不良15)の報告などがある。


4.ワルファリンとの薬物相互作用

相互作用についてはその種類や事例が多い(「医薬品との薬物相互作用」の項参照)。


5. ビタミンKの過度の摂取又はビタミンKの吸収障害

佐藤ら(2015)16)は、データベースを用いてワルファリンとビタミンKの相互作用を検討した論文を抽出し、ワルファリン服用者のビタミンK摂取許容量の系統的レビューを行った。クロレラ摂取17)・山菜摂取18)などの報告もある。


6. 服薬コンプライアンス・アドヒアランスの不良

服薬コンプライアンス・アドヒアランス不良についての報告がある17,19,20)。

Kumarら(1989)19)は、抗凝固療法コントロール不良例における服薬コンプライアンス不良例の存在を推計した。年齢、性、投与期間、処方対象疾患に有意差はなかった。抗凝固療法コントロール不良の主因は、服薬コンプライアンス不良と示唆された。


7. その他

その他に関与は明らかでない要因についても報告がある。

飲酒21)、喫煙22)、運動の影響23)、ストレスの影響24)、季節変動では有意な差は認められなかったとの報告25)、高蛋白・低炭水化物食の摂食による作用減弱との報告26)などの報告もあるが、変動の要因としては明らかでない。ワルファリン抵抗性を示した38才女性の症例報告27,28)されている。

参考)ワルファリンレジスタンス29)については、ワルファリン導入期から維持期を通じて一貫して認められるものであり、硝酸薬のように長期投与により初めて発現する耐性ではない。つまり、先天的にワルファリンの代謝の速い場合と、ワルファリンの標的分子であるビタミンKエポキシドレダクターゼの低感受性の場合がある(Ⅶ-3「耐性(レジスタンス)」の項参照)。ワルファリンレジスタンスを疑う前にまず確認事項を一通りチェックすることが必要と思われる。

 

 

【参考文献】    [文献請求番号]

1)Khan,T. et al.: Age Ageing, 32, 226(2003) WF-1641

2)Malhi,H. et al.: Postgrad.Med.J. 80,107(2004) WF-1694

3)小山 尚也ら: 日本臨床外科学会雑誌, 61, 390(2000) WF-1280

4)小山 尚也ら: 日本救急医学会雑誌,13, 337(2002) WF-1584

5)福村 英信ら: 神奈川医学会雑誌, 33,168(2006) WF-2346

6)斉藤 竜平ら: 第19回日本老年医学会北陸地方会抄録集, 19,16(2008) WF-2924

7)斉藤 竜平ら: 日本老年医学会雑誌, 46, 541(2009)  WF-3166

8)Ogo,Atsushi et al.: Diabetol.Int.,2, 214(2011)  WF-3952

9)田中 雅幸ら: 臨床薬理, 34, 57(2003)WF-1495

10)幸喜 毅ら: ホルモンと臨床,54,121(2006) WF-2341

11)Hansten,P.D. et al.: Drug Intell.Clin.Pharm.,14, 331(1980)WF-2338

12)Walker,G.A. et al.: Am.J.Manag.Care, 17, 617(2011) WF-4276

13)林 永規ら: 外科,57,972(1995)WF-0952

14)篠原 徹ら: 小児科診療,59,416(1996) WF-0950

15)羽田 裕二ら: 臨床研究報告書, 2001, 367(2002)    WF-1985

16)佐藤 陽子ら: 食品衛生学雑誌,56, 157(2015) WF-4316

17)石飛 玲子ら: レジデントノート,8, 1178(2006) WF-2343

18)菊地 諒子ら: ハートナーシング, 22,  965(2009) WF-3092

19)Kumar,S. et al.: Thromb.Haemost., 62,729(1989) WF-2310

20)伊藤 美以子ら: 東北脳血管障害研究会学術集会記録集,     31,     33(2009)    WF-3160

21)Havrda,D.E. et al.: Pharmacotherapy, 25, 303(2005)  WF-2333

22)Jordan,S.D. et al.: J.Pharm.Pract., 27,  470(2013) WF-4334   

23)Shibata,Y. et al.: Thromb.Haemost.,80, 203(1998) WF-1907

24)Hawk,T.L. et al.: Ann.Pharmacother.,  36, 617(2002)WF-1413

25)Salobir,B. et al.: Pathophysiol.Haemost.Thromb., 32,151(2002)    WF-1667

26)Beatty,S.J. et al.: Ann.Pharmacother., 39, 744(2005)WF-2011

27)新名主 宏一ら: 臨床神経学, 44, 489(2004) WF-2012

28)新名主 宏一ら: 血栓と循環, 13, 182(2005)WF-2167

29)Qureshi,G.D. et al.: Arch.Intern.Med., 141,  507(1981) WF-0176

 

【更新年月】

2021年1月

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